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ファイナンスの数理入門
福井県立大学経済学部経済学科助教授 佐野一雄 著
A5判/304頁
本体価格4,800円
ISBN4-87315-108-0
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(本書について)
本書は,ファイナンス理論を技術的に解説するテキストである。
本書では,ポートフォリオやオプションという言葉に馴染みのない読者にも,ファイナンス理論の核心部分を理解できるように,簡単な応用例を交えながら,なるべく平易な解説を試みる。数学に慣れていない読者にとっては,難しいと感じる部分も少なからずあると思うが,数式が理解できなくても考え方のエッセンスは伝わるように配慮してある。
ファイナンス理論や理論経済学を専攻する学生,金融の実務に携わる社会人のテキストとしてだけでなく,ファイナンス理論に興味のある一般の読者にも読まれることを期待している。
(本書の特長)
- ファイナンスの数理について解説を行うだけでなく,身近な表計算ソフトExcelによる例題解法を学ぶことにより,実感をもってファイナンスの手法を理解できるように配慮している。
- 理解に必要な数学的知識について,直感的理解が得られるよう,できる限り平易に解説し,高度な内容については省略して読んでも理解の妨げにならないよう配慮されている。
- ポートフォリオの基礎からブラック・ショールズ式の導出まで,広い範囲でバランスよく構成している。
- 数理だけでなく,経済学の考え方についても理解できるように解説している。
- 数理統計学の基礎知識も自然と身につくように配慮されている。
(本書の構成)
第1章では,ファイナンスの考え方を理解するために,パソコンと例題データにより,ポートフォリオの効率的フロンティアを実際に求めてみる。この章で使用するソフトウェアはMS-Excelであるが,このどこにでもある表計算ソフトの意外な能力に,読者はきっと驚くに違いない。例題の解き方を具体的に学ぶことによって,ファイナンスの基礎となるポートフォリオについて理解を深めることができる。第2章では,例題によってインデックスモデルの考え方を具体的に学ぶことができると同時に,最小2乗法による推定統計量の性質などについても解説し,回帰分析の考え方についても理解を深める。第3章では,ポートフォリオのリスクプレミアムを分析するのに用いられる資本資産価格モデル(CAPM)について,簡単な例題を通じて,その考え方に対する理解を深める。第4章では,いくつかの例題を与え,あらゆる資産の現在価値を評価するために必要な金利と割引率の問題を理解する。そして,第5章では,裁定定理を解説する。確率過程論を応用したファイナンス理論の経済学的基礎が裁定定理である。裁定定理は一般均衡理論と表裏一体の関係にあり,非常に高度な内容を含んでいるが,本章では裁定定理の意味とその応用について具体的に理解することを目指す。第6章では,確率過程の考え方を理解するために,二項過程,ポアソン過程,ウィーナー過程について,シミュレーションの具体的方法を例題を通して学ぶ。第7章では,いくつかの確率変数をマルチンゲールに変換することにより,マルチンゲールと呼ばれる確率変数の性質を理解する。第8章では,実際の株価の変動のように,連続ではあるかもしれないが,ギザギザで滑らかには見えない関数の微分に対する疑問に答えるため,普通の微分と確率微分との違いについて考察する。第9章では,伊藤積分の考え方とその基本的な性質について理解し,伊藤公式の具体的な応用方法について学ぶ。第10章では,いわゆる「強い解」と「弱い解」について考察することにより,確率微分方程式の解の意味について学ぶ。第11章では,ヨーロピアン・オプションの理論価格を導いたブラック・ショールズ式の導き方について学ぶ。これはフーリエ変換による熱伝導方程式の解法をそのまま応用したものであるため,解法そのものは経済学と関係のない応用数学の問題であるが,一通り解説する。第12章では,ギルサノフの定理の意味を理解し,マルチンゲール変換によるブラック・ショールズ式の導き方について学ぶ。理論的に高度な内容を含むので,必要な数理統計学の知識についても解説する。第13章では,理論経済学の分野からいくつかのトピックを選び,経済学とファイナンス理論の関係について考察する。具体的には,一般化された期待効用理論および確率効用過程論について簡単に紹介する。
(もくじ)
第1章 ポートフォリオ
第2章 インデックスモデル
第3章 資本資産価格モデル
第4章 金利と割引率
第5章 裁定定理
第6章 確率過程
第7章 マルチンゲール
第8章 確率と微分
第9章 伊藤積分
第10章 確率微分方程式
第11章 ブラック・ショールズ式
第12章 ギルサノフの定理
第13章 経済学とファイナンス理論 |
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