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技術経営とイノベーションの経済学
永田 晃也 著

A5判  300頁

科学技術と経済・社会の密接な相互関係が進展しつつあることに伴い、両者に対する深い知識と洞察力を持った人材の育成が喫緊の課題とされている。すなわち、技術の経済的インパクトや経営戦略が分かる研究者・技術者、技術知識が創造されるプロセスを理解できる経営者や政策立案者などが、複雑な現代社会における問題発見とその解決には不可欠な人材として期待されている。

 近年、このような人材育成の課題に対応するために、高等教育機関においては文理融合領域の教育研究を推進する新構想の学部・研究科の新設が相次いでいる。しかるに、取り分け教育研究の拡充が期待されている技術経営(Management of Technology: MOT)やイノベーション研究の領域においては、標準的な教育プログラムやテキストが十分に開拓されてきたとは言い難い現状にある。

 本書は、このような現状に鑑み、わが国では類書の少ない技術経営とイノベーションの経済学に関する標準的なテキストとなっている。本書が目指すテキストの特徴として、以下の点が挙げられる:

1)学部の専門課程から大学院修士課程までの関連コース履修者を想定した専門的なテキストである。

2)技術やイノベーションを扱った従来の社会科学的なテキストは、いずれかの伝統的なディシプリンに基づいて書かれてきた。本テキストでは、この分野が本質的に学際領域であることを重視し、内容を経済学的な理論とトピックに限定せず、組織論、戦略論などの経営学的な領域や科学社会学における研究の蓄積も総合した内容を企図している。

3)大学院の課程でこの分野の知識習得を志す学生は、しばしば学部レベルでは自然科学や工学の教育を受けたというバックグラウンドを持つ者が少なくない。この点を考慮し、本テキストでは必要に応じて社会科学の基礎的な概念に関する解説を織り込んでいる。

 欧米では、P. Stoneman, " Handbook of the Economics of Innovation and Technological Change " などのイノベーションに関する本格的なテキストが出版されているが、これらの内容はタイトルが表すように経済学的なトピックに限られている。また、わが国では近年、技術経営に関するいくつかの入門書が出版されているが、それらの内容は断片的な知識の寄せ集めの域を出ず、学問的な一貫性と深みに乏しい。

 本テキストの試みは、こうした先行出版物の限界を超え出るものであり、技術経営の実践的な知識とイノベーションの経済学に関する理論的・体系的な知識とを総合的に習得できるように執筆されている。


本書の内容と構成

本書は、4部14章で構成される。
 第1部では、主として経済学の領域で提示されてきたイノベーションの諸学説を概観し、財としての技術知識に関する理論的考察を踏まえて、イノベーションの決定要因をめぐる仮説と実証研究の成果を吟味している。

 第2部では、今日注目を集めている技術経営の主要なトピックを取り上げる。ここでは、技術経営の諸課題に対応するための実践的な方法論をレビューするとともに、イノベーションを担う組織、企業戦略、および人的資源管理のあり方などについて考察している。

 第3部では、イノベーションの普及と、それがマクロ経済に及ぼすインパクトについて概説し、技術をめぐるグローバリゼーションの動向に言及している。

 第4部では、イノベーション・システムの概念を提示し、日本型システムの特質を事例研究と国際比較研究の成果を踏まえて明らかにする。また、日本型システムの変革に向けた技術政策と企業経営の課題に言及している。




目次構成

第I 部 イノベーション概論
第1章    序論:イノベーションとは何か
 1-1 学説史の概観
 1-2 イノベーションの類型
 1-3 イノベーション・プロセスのモデル
第2章 イノベーションの決定要因
 2-1 需要プル vs. 技術プッシュ
 2-2 シュムペーター仮説の検討
 2-3 専有可能性のメカニズム
 2-4 技術機会

第? 部 技術経営論
第3章     技術経営の課題
第4章     技術戦略と研究開発戦略の構築
 4−1 ドミナント・デザインと競争優位
 4−2 技術予測
 4−3 研究開発組織
第5章     研究開発部門の人的資源管理
 5−1 研究開発人材のモチベーション
 5−2 デュアル・ラダーと専門職制度
 5−3 コミュニケーションとゲートキーパーの役割
第6章     組織間イノベーション
 6−1 組織間ネットワーク
 6−2 リード・ユーザーとユーザー・イノベーション
 6−3 研究開発のアウトソーシング
 6−4 産学連携

第? 部 イノベーションとマクロ経済
第7章      プロダクト・サイクルとイノベーションの普及過程
第8章     技術進歩の経済成長への寄与
第9章      技術貿易と研究開発のグローバリゼーション

第?部 イノベーション・システムと技術政策
第10章 ナショナル・イノベーション・システムの概念
第11章 日本型イノベーション・システム
 11−1 日本型イノベーション・システムの特質と成長過程
 11−2 事例(1)鉄鋼業:プロセス・イノベーション導入の日本的特質
 11−3 事例(2)自動車産業:リーン生産システムと新製品開発
第12章 イノベーション・システムの国際比較
 12−1 国際競争力の比較
 12−2 アメリカのイノベーション・システム
 12−3 欧州のイノベーション・システム
 12−4 アジアにおける技術蓄積
第13章 地域イノベーション・システム
 13−1 技術の地域集積と大学の役割
 13−2 事例としてのシリコンバレー
第14章 技術政策の課題:イノベーション・システムの変革に向けて