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Excelによる 統計処理入門 [改定2版]
前川 功一・宜名真勇・椿 康和 著
A5判 288頁
\2,940
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対象読者:本書の目的は,主に経済・経営系の学生を対象として,代表的な表計算ソフトであるExcelが,データの統計的処理のための極めて有効な手段であることを,具体的なデータの処理を通じて理解させることである.
主として,日本語入力やワープロなど基本的な情報処理のリテラシを学習済みの学生(2〜3年生)を対象としているが,Excelを用いてデータを統計的に処理・加工して,その結果を経済分析やプレゼンテーションに利用したい実務家や社会人の使用にも配慮している
大学の講義用テキストとしては,以下のような講義および用途を想定している.
●教科書
パソコンによる実習を通じて,経済データの基本的な分析手法を学習させることを目的とした単位科目(90分×15週)の教科書として使用する.
●副読本
統計学概論や経済統計学など,経済・商学系学部で行われる統計学分野の講義の副読本として使用する.これらの講義は,理論的側面の解説を中心として座学で行われているが,講義にもとづいてパソコン実習を指示し,レポートを作成させる場合も多く,その際の参考図書として利用させる.また,マクロ経済学,金融論,財政学など経済学の各講義及びゼミでも,経済データの数量分析を実習させる際の副読本として使用する.
本書の特徴
現在出版されている,Excelを用いた統計に関する図書の大半は,簡単なデータ処理をExcelで行わせる入門的な内容のもので,Excelの操作についても統計の内容についても,ともに不十分である.
●多変量解析や推定・検定といった,やや高度な統計処理を対象しているが,Excelの操作手順や活用方法の学習には不向き.
●Excelについては詳細に解説してあるが,データの統計処理という視点が不十分.
などとなっており,上述のような目的の講義における教科書や副読本として使用に適したものは少ない.
本書は,基本的な統計処理の手法とその有効性,ならびにExcelによるデータ処理の手順を理解させることを目的としている.
●すなわち,表計算ソフトの簡単な操作によって大きな効果が得られる,各種の統計比例数の計算,分類・集計,統計グラフ作成,予測といった処理の手順を主として取り上げている.推定や検定という統計解析の中心となる概念については,理論的な解説は統計学のテキストに譲り,Excelによる回帰分析などの処理結果として出力された,各種統計量の意味や値の解釈という視点からの説明にとどめている.
●また,学生がみずから操作を行いながら,表計算ソフトの各種の統計処理への利用方法や応用力を身につけることを狙いとしている.この観点から,多変量解析のように,Excelでの操作手順が複雑になり,その結果マクロ機能までを必要とするような解析手法は取り上げない.また,あらかじめ用意したマクロを呼び出すだけで一連の統計的処理が行えるといった方法も採用しない.
反面,経済・経営の分野で広く用いられている,以下に示すようなテーマについて取り上げている:
●移動平均を用いた季節調整やトレンドの計測,自己回帰モデルによる予測といった時系列分析
●待ち行列やABC分析などの基本的なORの手法
●データの分類・抽出や多段階集計などの基本的なデータ処理
●アンケート調査の集計
本書の利用価値は単なる統計学の学習だけではない.データを統計処理した結果を効果的に活用する方法についても,具体例を挙げて解説している.例えば,発表やレポート作成のために,Excelの計算結果や図表をWordやPowerPointなど他のWindowsアプリケーションで利用する方法や,より効果的なグラフ表現の方法などのノウハウである.これらの,Excelをより有効に利用する方法の解説は,読者が本書での学習結果を様々に活用する上で非常に参考となるものと思われる.
本書の構成と内容
以下に本書の各章の構成と内容について,その概要を述べる:
1章 表計算の基本概念
イントロダクションおよびガイダンスを扱う.合計や平均,度数分布など簡単な例から,グラフや,やや複雑な処理結果まで例示して,表計算の目的・意義,その有効性について解説するとともに,ワークシートの役割などについて説明している.
2章 Windows操作の基礎
を 初めてWindowsパソコンに接する利用者を考慮して,ツールバーやメニューバー,クリック,ダブルクリック,ドラッグなどWindowsの画面構成とアプリケーションに共通する基本的な操作方法について,全体の予備知識として簡単な説明行う.
3章 表計算操作の基本
Excelの基本操作を学ぶ.セルとは何かに始まり,カーソルの移動や文字・数値データの入力,編集,ファイルへの保存などを説明する.関数を用いずに簡単な四則演算を行わせ,表計算の効果を実感させる.また,二種類程度の使い回しのきく統計データを実際にワークシートに入力させ,保存させる.ここで入力したデータは以降の章における解析に使用する.
4章 関数と操作のコピー
例題として偏差値を求める処理を取り上げ,その過程で合計・平均・偏差の各関数を用いて,関数の基本的な使い方をマスターさせる.また,同じ計算を繰り返す際には計算式のコピーで行えること、計算式のコピーとは操作のコピーでもあることを教える.なお,計算式のコピーの際には常数的に用いるセルと変数的に用いるセルとでは参照方法が異なる(絶対参照と相対参照)点についても言及している.
5章 比率の計算
構成比,加重平均,特化係数,増加率などの各種の統計比例数の計算手順について教える.同時に,フォントやセル幅の変更,メモの入力,セルの編集,項目の説明の入力方法(セル内複数行折り返し)など,処理結果をさまざまに装飾して,他人に見せるのに耐えられるワークシートの作り方についても扱い,ワークシートを印刷させる.
6章 グラフの作成
統計グラフにはどのようなものがあるのかについて,基本的な解説を行うとともに,それらの作り方を説明している.棒グラフや円グラフなどの簡単なものから,レーダーチャートといった複雑なものまでが含まれている.統計処理の面では,度数分布表からローレンツ曲線を描くまでの範囲を扱っている.
7章 相関と回帰
相関係数と説明変数が1個の単純回帰を扱っている.回帰分析で算出される各種の統計量について説明するとともに,散布図のプロット方法や,その上に推定した回帰線を重ね合わせる方法についても言及している.
8章 重回帰
7章の続きとして,複数の説明変数を用いた重回帰分析を解説している.手順とともに,推定や検定についても関連する範囲で言及されている.
9章 データ処理
住所録やランキング表を素材として,データのソート,抽出,ピボットテーブルなどを使用した多段階集計の処理手順を説明.また,統計処理に関しては,順位相関と分位数を扱う.さらに,インポート機能を用いて,より多彩なデータを得る方法についても述べられている.
10章 時系列分析
移動平均を用いた季節調整やトレンドの計測,自己回帰モデルなどによる予測の方法について説明.
11章 経営分析
乱数シミュレーションによる待ち行列の応用やABC分析,在庫管理など,オペレーションズ・リサーチの基本的な手法の中で,実際の場面で用いられることが多く,経済学部の学生にとっても馴染みやすいテーマを取り上げて説明.
12章 アンケートの集計処理
具体的な調査表を例示して,アンケート調査結果の単純集計やクロス集計の方法を説明.
13章 Excelのエキスパートになろう
Excelの処理結果を,効果的なレポートの作成やプレゼンテーションに利用することを目標として,WordやPowerPointとの連携,他のソフトとのデータ交換の方法,凝ったグラフの作り方,地図とグラフの重ね合わせなどについて説明.またマクロによるより高度な処理についても,その入り口部分を説明している(マクロウィルスの弊害があることも).
付録 一覧表形式のサンプルデータ
3章で入力するものを中心に,一覧表形式でサンプルデータを添付する.経済分野だけのデータだけにとどまらず,昨今のトレンドである環境問題のデータなど,学生が自分で解析してみようと思わせるデータを多数含めている.
著者紹介
前川巧一 広島大学経済学部 教授(計量経済学)・経済学部長
宜名真勇 広島大学経済学部 教授(経済統計学)
椿 康和 広島大学経済学部 教授(情報処理論) |
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