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行動科学のための多変量データ解析
宮埜寿夫著
A5判 300頁
\3,600
【発売予定】 |
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本書のねらいは、心理学、認知科学などの行動科学を専攻する学生、多変量データの解析を必要とする研究者などを対象として、主要な多変量データ解析法を実践的に説明することにある。
多変量解析に関する教科書、あるいは専門書は、解析法の理論的な背景説明を目的とするものから方法の単なる紹介を目的とするものまで、これまでに数多く出版されている。一方、情報処理技術の発展に伴い、多変量解析法はパーソナルコンピュータの上でも十分に利用できる環境が整えられている。特に, SAS, SPSSを代表とする統計解析ソフトウエアのここ数年間の充実には目覚ましいものがある。このような状況は、多変量解析の利用を容易にしたばかりでなく、解析を実際に行いながら多変量解析法を理解してゆくという新たな学習方法を可能にしたと言える。
本書では、このことを考慮し、行動科学においてよく利用される解析法について、SASあるいはSPSSによる解析に習熟することを念頭に、解析法の理論的枠組み、解析結果の解釈方法が詳細に説明されている。また、数学的議論は、文科系の学生に理解しやすいように補足的に与えられ、理論的な背景ができるだけ数学的な予備知識なしに理解できるように記述されている。
第1章は、「多変量解析が対象とするデータの具体的な紹介、SAS, SPSSにおけるデータの取扱い」の説明に当てられている。また、本書で用いられる数学的表現、とくに行列・ベクトル表現に関する説明もここに含まれている。なお、本書では、行列などによる数学的な表現は、対象とする読者を考慮し、解析結果の意味を簡潔に説明するためにのみ使われている。
第2章以降は行動科学における代表的な解析法の説明に当てられている。まず、第2章では、「線形回帰分析、数量化1類」について述べられる。これらに対応するSASプロシージャとして、REGおよびTRANSREGが主に取り上げられ、それぞれその利用法および結果の解釈方法について説明されている。また、SPSSについても、SASの場合と同様にその利用法が説明されている。
第3章では、「主成分分析」について述べられている。SASプロシージャPRINCOMPの利用法、SPSSの場合のオプションの設定法などが説明され、与えられる結果の解釈方法について述べられている。
第4章では、因子分析について述べられている。因子分析は行動科学において最もよく用いられる解析法であることから、推定方法、回転方法の選び方などについていくつかの解析例を使いながら詳細に述べられている。対応するSASプロシージャは、FACTORである。
第5章では、「正準相関分析および対応分析(数量化3類)」について述べられている。正準相関分析は比較的利用されていない方法であるが、対応分析、重回帰分析との密接な関係やふつの変数群の関係を直接的に明かにする代表的な方法であることなどを考慮すると、重要な方法と言える。対応するSASプロシージャとして、CANCORR, CORRESPの利用法およびその結果の解釈方法について述べられている。
第6章では、「クラスター分析、多次元尺度構成など類似性データの解析法」について述べられている。クラスター分析の方法としては、階層的方法(SASプロシージャCLUSTER)と非階層的方法とを取り上げている。また、多次元尺度構成法としては、通常の方法の他に、個人差モデル、多次元展開モデルによる方法を取り上げている。これらは、SASプロシージャMDSおよびALSCALに対応する。
付録として、本書で使用されたSASによる解析プログラム、およびSPSSによる解析オプションの設定をマニュアル形式でまとめてある。
各章の構成は、いずれも同じであり、
(1)解析の対象となるデータ、および解析のねらいについての説明
(2)解析法の説明
(3)SAS(SPSS)による解析(オプションなどの標準的な設定法)
(4)解析結果の解釈法
からなっている。
例としてあげられるデータは、心理学などで現われる実際のデータあるいはその一部であり、読者に解析結果が理解しやすいように選ばれている。取り上げる解析法の説明の詳しさも、行動科学で必要とする程度に応じて変化させてある。また、解析法の説明は、解析結果が理解しやすいようにSASあるいはSPSSによって与えられる結果に対応づけて行われている。
このような記述方法は、数学的な展開によって解析法を説明しようとする従来の方法に比べ、解析法の実践的な理解に有利に働くと考えられる。また、取り上げられる解析法は、行動科学における利用法および必要性を考慮して記述されているので、行動科学を専門とする学習者により理解しやすいと考えられる。
SASなどの統計解析パッケージの使用法については、これまでに多くの書が出版されている。全体に、本書では、これらの既存の書とは異なり、各解析法ごとに使用法、すなわちオプションの標準的な設定法を与え、それと同時に与えられる解析結果をどのように解釈すべきかを詳細に述べているのが特徴となっている。したがって、本書は教科書としてばかりではなく、行動科学に関係する学生、研究者が特定の解析をSASなどで行う場合の簡便なマニュアルとして利用することもできる。
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